【開催報告】【来日特別講演・ワークショップ】
ロサンゼルス発 進化/深化するレッジョ・インスパイア実践
‐子どもの可能性を引き出す21世紀型教育アプローチへのヒント‐
【事務局より開催報告】
アリース氏の提唱する教育アプローチは、イタリア発のレッジョ・アプローチとはまた異なる視点を持った、素晴らしい学びがありました。
レクチャー前の打ち合わせ時に、アリース氏から会場の壇上から登壇台を下ろしてほしい、と提案がありました。観客とよりインタラクティブな関係を築きたいというアリース氏の考えからです。彼女と話していると、打ち合わせの時でも、食事をしているときにでも、ある種の「信念」に基づいて行動しており、それが徹底している、と感じます。
子どもの見方、子どもに対峙する時に何を大事にするか、根底に信念を持ち、21世紀に向けた教育をどのようにするかの模索は、彼女独自で実践から編み出したものであり、それはもはや「レッジョ・アプローチ」ではない、進化/深化したものです。複雑系の思考に関しても深い見識があり、そしてそれをどのように子どもたちに育んでもらうか、大きなヒントをいただきました。
アリース氏は実践者、教育者、研究者であると同時に優れたクリエイターである、と感銘を受けました。
ワークショップの最後に、参加者からの質問に答える中で、「私のアプローチは哲学である」という話がありました。
自身の実践の中で思索し、生み出してきたアプローチを語る彼女の言葉には強さがあります。その確かな強さは参加者の皆さんにも伝わったのではないかと思います。
【概要】
1984年に設立されたロサンゼルス・サンタモニカにある幼稚園エバーグリーン・コミュニティスクールは、30年以上に渡りレッジョ・エミリアをはじめとする世界の先端的な教育を参考にし、独自のアプローチを構築・実践している。アプローチで大事にしているのは、[子どもの好奇心に寄り添うことで、粘り強さ、創造力、好奇心、良い質問を構築する力を養い、21世紀に必要とされる学ぶ姿勢を身につける]ことである。また、園の名に「コミュニティ」と名がつくように、自園のみならずサンタモニカ周辺の園への教員養成の主導的役割も担い、地域の教育の質向上に貢献している。さらにはロサンゼルス全域およびアメリカ全土に渡り、教員養成・幼稚園運営指導を行っている。
本講演の講師アリース・アイヴィ氏は園の設立、30年以上にわたる教師としての実践を経て、現在アメリカ国内のみならず中国・ニュージーランド・イスラエル・カナダ・スコットランド等世界各地でセミナーを開催している。世界の教育現場の「今」を吸収しながらアプローチを探求する深化型のレッジョ・インスパイアの実践から、日本でのアプローチのあり方を模索する。
【午後のワークショップ】理論から実践へ、実際の教育現場でのアプローチ方法
午後のワークショップでは、午前の講義内容の理解をさらに深めます。様々なマテリアルを用い、理論に基づいたグループワークを実践することで、21世紀教育に必要とされる知識や批判的思考力の身につけ方を理解し、実際の教育現場での生かし方を探求します。
講師:Alise Shafer Ivey(アリース シェィファー アイヴィ)
カリフォルニア・サンタモニカにあるエバグリーン・コミュニティスクールの創立者であり現・会長。ロサンゼルス・ペダゴジカル・インスティテュート創立者および事務局長。UCLAエクステンション、サンタモニカカレッジなど大学での指導経験を持つ。また、アメリカ国内のみならず中国・ニュージーランド・イスラエル・ペルー・オーストラリア・ネパール・カナダ・スコットランドでもセミナーを開催。2001年プレンティスホール出版「教えることと学ぶこと:レッジョ・エミリアアプローチの共同研究」へ寄稿。また2012年にはTEDxでスピーカーとして登壇した。
講師からの言葉
子ども達が持つ新鮮でオープンな目を通して世界を再発見しましょう。
子ども達との真のつながりを持ち子ども達の創造性を伸ばせるよう、自分の扉を開きましょう。
この講演とワークショップでは教師が効果的に下記のことができるようになるよう、探究します。
・子ども達の”不思議”を再発見する
・子ども達をより高いレベルの思考に惹きつける
・子ども達の生涯に渡る気質を育む
・子ども達を変化する世界に備える
具体的アプローチ
① Cycle of Theory Repair(自分で組み立てた仮説を、経験や他者との対話によって修正することを繰り返しながら理解・知識を深める)
② Doubting and Believing (問いを持つこと、そして信じること)
講師出版物およびTEDx talks
• 2012 TEDx サンセットパーク
比喩とメタ認知
https://www.youtube.com/watch?v=4ymzIdDMDvM
• 2005 ミシガン 幼児教育の改革
クリケットを知る:学校の音への探究
• 2001 日常の瞬間、非日常の可能性、メリルプレンティスホール
「教えることと学ぶこと:レッジョアプローチの共同研究」 (書籍 / 1章分執筆)
https://www.amazon.com/Teaching-Learning-Collaborative-Exploration-Approach/dp/0130287830
• 1992 カリフォルニア パシフィックオークスカレッジ
内にあるイメージ: 作家の声
当日アンケートから(WEB掲載許可いただいた方のすべてのアンケート掲載)103名参加、71枚アンケート回収
質問事項:①満足度 ②満足度理由 ③今後期待するレクチャー ④自由記入
①とてもよい②アリッサさんのお人柄が大勢の講義の形でもよく伝わってきました④ありがとうございました!(女性、40代、造形教室主宰)
①よい②前半の通訳の方の言葉が聞き取りにくく、残念でしたが後半でしっかり学ぶことができました。事務局のご対応に感謝申し上げます。③認知能力づけであった日本の頭を切り替えるのは大変でしょうが、楽しみのある改革です。頭の切り替えのひとつひとつを教えていただきたい!(女性、60代以上、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②アリスさんのお話内容がとても深いもので目からうろこでした (男性、40代、会社員/公務員)
①とてもよい②幼稚園、アメリカの中でレッジョの思想がどのように根付いているか知ることができたため。理論+写真や映像から深く思考することができました!③学童保育におけるレッジョ・アプローチ(オロロッジョについて)(男性、20代、学童保育)
①とてもよい②これからの幼児教育にとって必要なことだと思いました。個々の思い考えを大切にしていきたいです③今回のような形がよろしいと思います④事例をもとにお話しをしていただきましたので、わかりやすく良かったです(男性、60代以上、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②小学生の子ども達も参加できるような短期スクールをしてほしい(女性、40代、主婦、アートアトリエ勤務)
①とてもよい②実例がたくさんあった。保護者の保育中の様子も見られ興味深かった。一言「考える」と言われるだけではなく実体験できたことも面白く、子どもの目線で体感することができたのは良かった③日本のreggio インスパイヤって何?(女性、30代)
①とてもよい②子どもの声をよく聴く、信じることと疑うこと、大切なメッセージをいただきました!勇気が出ました!③日本のreggio インスパイヤって何?(女性、40代、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②実際の動画など実例を元に具体的なアプローチについて学ぶことができたので③日本でレッジョなどの幼児教育を実践されている方の講演。同じような興味の方が集まっていると思うので交流できる時間があると良いと思いました。(女性、30代、会社員/公務員)
①よい②日本でレッジョ・エミリア・アプローチを取り入れた具体的な実践例を知りたい(女性、20代、学生)
①とてもよい(男性、30代、経営者)
①よい②よくある「子どもに学ぶ子育て」という言葉の本当の意味が初めて理解できました!抽象的に語られることしかなかった「子どもに学ぶ」の神髄に触れることができ、鳥肌がたちました。通訳の方がもう少しリラックスしていたらな~と感じました。通訳の方も楽しんでもらいたかったです(女性、40代、主婦/主夫)
①とてもよい②具体的な事例 相互の理解・深まる構成子どもの話をきくこと 質問する力についてすぐに生かせるヒントを 概念的質問について理解が深まった③レッジョ・アプローチについてより勉強したい(女性、40代、アートアトリエ勤務)
①よい②具体的な例、反応をたくさん集めていただけると助かります③最後の男性の質問にびっくり。幼児をとりまく大人の環境の現実を知りました。子どもと関わるすべての大人には見えないものを見る目と♡をもってほしいと思います(女性、60代以上、デザイナー)
①よい②私が根本から変わらなければ、とまた思えました。子どもたちの育ちに責任が持てるようになりたいです(女性、50代、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②自身が実践している中であまり考えたことのない角度から子どもの思考を促していたから(男性、30代、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②先生としてのあり方についての学びが豊富なエピソードとともにあったため。また、社会的公正主義に基づいた対話から始まる学びのアイディアを得たため(男性、30代、教諭)
①とてもよい②具体的なアプローチ方法を知ることができた(女性、50代、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい(女性、30代、美術ワークショップ運営)
①とてもよい③実践的なものを具体的に聞きたい(女性、50代、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②日本ではなかなかきけない文化に根差した部分から考えることができた。はじめて生のレッジョに関する話をきけた(女性、50代、保育士/幼稚園教諭)
①よい②日常の保育で実践していきたいと思う学びがたくさんありました③実践している幼稚園に見学に行ったり、先生のお話がきけたりするとうれしいです(女性、30代、保育士/幼稚園教諭)
①よい②ever greenでの教育哲学を話していただいたから④fantasy=theory-buildingの連続性を感じた。(男性、50代、会社員/公務員)
①よい(女性、30代、会社員/公務員)
①とてもよい②概念理論的ではない、ダイレクトなアプローチと考察を実例のストーリーとともに聞き、話す機会があるため。発見(自分についても含め)がある。ひとつの質問「四角形」については同じ解釈を間違えていました③今日くらいの人数でディスカッションや質疑を取り入れながらの講演は素晴らしいと思います④「伝統的な教育スタイル」サイドにいる人が参加しやすい企画もあるといいなと思います(女性、40代、遊具・子ども用家具デザイナー)
①よい(女性、40代、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②保・幼・小の連携の難しさを感じていますが、新たなアプローチの可能性を感じた(男性、20代、会社員/公務員)
①まあまあ②内容がむずかしくわからないことがあったので③子ども達と大人との関わりについてもっと実例をみたいと思った。ディスカッションだけではなく、遊びの様子や食事の様子などを今回のように動画でみて、話し合うような講座(女性、20代、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②とても具体的な内容でわかりやすかった③多言語での幼児教育の事例(男性、50代、会社員/公務員)
①とてもよい②この話をもっともっとたくさんの大人に聞いてほしい。ものを見る視点がいっきにかわった③子どもの発達と環境について④また同じ先生でレクチャーをしてほしい(女性、30代、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②理論と実践がバランスよく提示されていたから(女性、30代、会社員/公務員)
①とてもよい②レクチャーは一方的な内容ではなく参加者全体で考えていくものだったので様々な考え方を知ることができたて有意義だった。(女性、50代、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②実践できることが学べたから。③現場での問題、解決の共有ができる場(女性、40代、アートラボ勤務)
①とてもよい②具体的なエピソードがあり、とてもわかりやすかったです③子どもがもつ理論を起点に話し合うことの大切さ、興味深さについて園の他の職員にもきいてもらいたいと思いました(女性、30代、保育士/幼稚園教諭)
①よい②海外の具体的なシチュエーションが見られた。どういう力、観察すればよいかを知ることができた③親としてどういうところに着眼すればよいのか、日本でのこういった教育の試みの紹介(女性、40代、会社員/公務員)
①とてもよい②実践(具体の)例が多く示されるのでは?と思っていたがそうではなかった。しかし、それがとてもよく本質的な理解を深める場になったと思います(男性、40代)
①とてもよい②エバグリーンの話から、現場でもいかせそうなヒントをたくさんいただけました。ありがとうございました(女性、30代、保育士/幼稚園教諭)
①とてもよい②プレゼンテーションがわかりやすかったため!④ありがとうございました!(女性、30代、フリーランス)
①よい②レッジョエミリア興味ありつつも理解が漠然としていたので良い機会でした④ありがとうございました!(女性、20代、会社員/公務員)
①とてもよい(男性、50代、その他)
①よい②今までにきいたことのないお話をきけ、育児にいかせそう③家庭での関わり、できることについて(女性、40代、会社員/公務員)
①とてもよい③海外での先進事例を知ることができるイベント(女性、20代、会社員/公務員)
①とてもよい②コンセプチュアルクエスチョン。“聴く”ことの重要性。パラドクス、他者と関わりながらひとつのものを創造することなど。印象的で勉強になることばかりでした。アタマの中がいっぱいになっていて言語化できないことだらけですが、私のせんもんぶんやの音楽学、誌表現にも通じることがたくさんありました。ありがとうございました(女性、50代、大学教員)
ページ下に当日アンケートまとめが掲載されています!
レクチャーの様子
ワークショップの様子
→you tubeでAlise氏のレクチャーを聴くことができます!
園の様子(写真:Alise氏提供)